30年ほど前のことです。
竿竹屋さんが、よく当社へ直接買いに来ていました。
そのなかでも忘れられないお客さんがいます。
利尻から来て、昆布を干すために太い竿を買っていった人。
でも、そのときお金がなかった。
どうしたかというと、昆布で支払ったのです。
昆布がお金になった日
その昆布は、そのまま当社への支払いにあてられました。
「物々交換」という言葉は知っていましたが、
まさか本当に経験するとは思いませんでした。
しかも、その昆布がまた絶品で。
食べてみたら、本当においしかった。
思わず「これなら支払いで十分だな」と思ったくらいです。
ほのぼのとした時代
今では考えられない話です。
クレジットカードも、電子決済もなく、
「昆布で払う」なんてことが、
ちょっとした笑い話ではなく、現実にあった。
あのころは、まだ世の中が、
どこかほのぼのとしていた時代でした。
物干し竿と昆布の縁
物干し竿を作っていると、
洗濯物を干すだけでなく、昆布まで干す竿もある。
そんな思いがけない縁も生まれます。
竿は、ただの棒かもしれません。
でも、その棒がつなぐ人と人とのやり取りは、
昆布の旨みみたいに、いまも心に残っているのです。

